100A40

70歳の男性。全身倦怠感と食思不振とを主訴に来院した。6か月前から肺癌のため抗癌化学療法を受けている。意識は清明。身体所見に異常はない。尿所見:浸透圧600mOsm/L(基準50~1,300)、蛋白(-)、糖(-)。血清生化学所見:尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸1.1mg/dL、Na 120mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 87mEq/L、浸透圧249mOsm/l(基準275~288)。
この患者で行うのはどれか。
水制限
食塩負荷
生理食塩液の投与
5%ブドウ糖液の投与
サイアザイド系利尿薬の投与

解答: a

100A40の解説

肺癌の背景があり、尿浸透圧が保たれているにも関わらず、Na 120mEq/L、尿酸1.1mg/dL、血漿浸透圧249mOsm/lと血液が異様に薄い。ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉である。
a 正しい。水制限がSIADHの第一選択となる治療である。
b △。食塩負荷を行うこともある。が、急速なナトリウム補正は橋中心髄鞘崩壊症を惹起しかねないため、慎重に行う。
c 生理食塩液は0.9%であり、薄い。フロセミドと合わせる形で3%食塩水は投与することがある。
d 5%ブドウ糖液を投与するとさらに血液が希釈してしまう。禁忌。
e サイアザイド系ではなく、フロセミド系なら用いられることがある。
※100回当時の受験生にとって「SIADH=水制限する疾患」でしかなかった。食塩負荷やフロセミド、3%食塩水などそもそも脳内に存在しなかった。5%ブドウ糖液を投与すると血液が希釈するなど90%の受験生は知らなかった。が、近年は国試のインフレ化とともに細かな治療まで問われるようになっている。本問でも厳密に言えばbも誤りとは言えない。
※何も迷わずにaを選べた100回当時の受験生の方が逆に幸せだったのかもしれない。が、そんなことを懐古していても仕方ない。我々は現実を直視し、先へ進もう。

正答率:65%

テーマ:ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉の治療

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